奈良医院だより  bQ69

                                         

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奈 良 医 院

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平成21年5月1日

(2009年)

臓器移植法改正に期待する

奈 良 正 人

臓器移植法に基づいて、脳死した人から初めて臓器提供を受け移植されたのが、平成11年2月28日のことであった。10年たった今まで日本で行われた脳死移植は81例にとどまっている。米国では毎年数千例、欧州の主要国でも数百例の脳死移植が行われている。心臓移植に限ってみても、米国では年間2000例以上、韓国や台湾でも数百例以上が行われているのに対し、我が国では、移植法が施行され10年になるが、年平均5例程度にとどまっている。他の国々とこれほどに差があるのは、日本の移植法が「本人の生前の署名」を臓器提供の必要条件としていることが原因と思われる。海外ではこのような国は無く、世界保健機構(WHO)でも本人の生前の意思が判らない場合には、家族の判断に従うことが示されている。日本においては署名があれば臓器提供が可能といっても家族の反対があったり、15歳未満の子供であったりした場合は臓器提供が認められていないのが現状である。このため、重い心臓病で心臓移植が必要な子供の中には、多額の募金活動をして移植のため海外に渡る例も増加している。大人では臓器売買に絡んでいる例もあり、諸外国から批判も出てきている。現在日本人の渡航移植は、米国、中国、東南アジアがほとんどであるが、現地患者の移植を受ける機会を奪うとして批判が高まってきており、国際問題になってきている。その為WHOは臓器移植を自国内で完結させるという、渡航移植を原則禁止する指針を今月中にも示す見通しであるという。

渡航移植が世界的に禁止されると、我が国では移植手術の技術を持っている医師がいるのに、提供臓器不足や、年齢制限等で、移植出来ず死亡する例が激増すると予想される。今国会で、臓器移植法の改訂が審議され始め、欧米並の基準で臓器提供を可能にする案や臓器提供可能年齢の引き下げる案等多方面で論議されている。一刻も早く良い方向に改訂されることを期待して止まない。

 

てんじゅ裏