奈良医院だより  bQ51

                                       

              

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                          平成19年11月1日

                             (2007年)

入浴中の死亡事故を防ぐために

奈良 正人

 在宅死亡例の中に、入浴中に死亡し死体検案を求められる例がある。朝いないと思っていたら、浴槽内で死亡していたとか、入浴していることはわかっていたが、なかなか出てこないので行ってみたら、浴槽に沈んでいたなどの事例である。

 秋田県内の死体検案中、入浴中の死亡は、最近8年間では年間110〜176件で、年平均133.3件位であると報告されている。その中には病死例もあるが、溺死例も約40%を占め、意識を失っても入浴中でなければ結果的に死亡していなかったと思われる例もあるという。

 一年を通じて月別発生件数をみると12月〜1月が多く、ちょうど寒い時期に多発している傾向にあるという。北海道旭川市の例では年間平均しており、当地と北海道の寒さに対する住居環境の差と考えられている。特に冬は居間と脱衣所、浴室、浴槽内の温度差が大きく、血圧の変動や不整脈の発生に影響があると思われており、秋田大学法医学教室での実験でも入浴時に血圧の変動や危険な不整脈の発生がみられたとの報告もある。

 入浴中のトラブルを防ぐためには、脱衣所、浴室に暖房を入れ、入浴時の湯の温度を低目にし温度差をできるだけ少なくする必要があるだろう。更に高齢者は、夜遅く一人で入浴するのを避け、日中に入るようにしたり複数で入ったりし、一人で入っている時は時々声を掛けるなどの配慮が必要になるだろう。特に高血圧、不整脈等の持病がある人は要注意で、風邪をひいていても一般的には発熱がなければ入浴を禁止していないが、胸苦しいなどの胸部症状があるときは、心筋炎による不整脈の発生も考慮し入浴は控えるべきだろう。

今後、入浴中に意識が無くなっても沈まないよう入浴時の湯量の配慮、中に幅広の肘掛け構造のある物や横になっても顔まで湯がこないようなバスタブ、更にワキの下にパイプを入れる等の補助器具の開発も有効と思う。

 

てんじゅ裏