奈良医院だより №441

       

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奈 良 医 院

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令和5年9月1日

(2023年)   
  

心臓突然死と自動体外式除細動器(AED

心臓突然死とは、心室細動のような致死的心室性不整脈に突如襲われ、心臓の収縮運動に異常が生じ、脳を含む全身に血液が循環できず死に至ってしまう病気です。わが国では心臓突然死によって亡くなっている人は年間7.9万人に上るといわれており、約7分に一人が心臓突然死で亡くなっています。主な原因は心筋梗塞、狭心症が50~60%で最も多く、次いで心筋症が30~35%、遺伝性不整脈が10%位と言われております。心臓病と言えば高齢者のイメージが強いのですが、スポーツ関連の心臓突然死の場合は若年層に多く、18歳以下の突然死の約40%はスポーツ関連であると報告されています。0~18歳でも年齢が上がるほど発生率が増加しますが、これは運動部活動での運動強度の変化に伴い、運動中の突然死の発生が増加するためと考えられています。若年スポーツ選手においては、冠動脈異常、大動脈二尖弁、肥大型心筋症、WPW症候群等が背景にあると言われて注意喚起しております。一方で、試合前に見つけることができない心臓突然死リスク因子として心臓震盪が挙げられます。これはボールや手足が胸壁に強く当たるような競技者間の接触が多いスポーツ、硬式野球や空手、サッカー、ソフトボール等で発生が多いと報告されております。心臓震盪による突然死は冠動脈異常や肥大型心筋症に続いて多く発生しており、注意を促していると共に、心臓震盪は心室細動が発生して死に至るが、直ぐにAEDを利用すれば救命率は上がるとして、その利用を推奨しております。心室細動では発生後10分以内でのAED使用で救命率が上がりますが、10分以上では、救命の可能性はほとんどなく、救命できたとしても、麻痺などの重篤な後遺症が残ることがあります。
 AEDは現在、街中の学校を含む公共機関、医療関係機関、スポーツ関連機関、ショッピングモールや自販機まで多くのところに設置されております。スポーツ現場で練習や試合中に倒れ亡くなった例もありますが、AEDにより救命され、皮下植え込み型除細動器(S-ICD)を入れて試合に復帰しているプロのスポーツ選手もおります。このように練習中のみならず試合本番中にも心臓突然死は生じる可能性があることから、心血管疾患を考慮したメディカルチェックとスポーツ現場における心臓突然死をゼロに、のために1:倒れる瞬間を目撃、2:そばに救命者、3:そばにAED3要件がそろえば救える可能性が高くなることが強調されている。熱中症でも程度によっては死に至ることもあり、高温多湿の環境下でのスポーツ活動中止を心掛け、安全なスポーツ活動を進めて行きましょう。


                     てんじゅ裏